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【中学受験国語】比喩表現を見抜く力を育てる – 気づけない子への具体的対策法
国語2025.08.13

国語の読解問題や文学作品において、比喩表現の理解は非常に重要です。しかし、「比喩表現は大事」と言われても、そもそも比喩表現に気づけないお子様も多くいらっしゃいます。今回は、比喩表現を見抜く力を育て、正しく理解できるようになるための具体的な方法をご紹介します。
比喩表現に気づけない理由
1. 比喩表現への馴染みの少なさ
現代の子どもたちは、日常会話で比喩表現を使う機会が減っています。SNSやゲームなど、直接的な表現が多い環境で育っているため、遠回しな表現や暗示的な表現に慣れていないのです。
2. 抽象的思考の発達段階
比喩表現を理解するには、「AをBに例える」という抽象的な思考が必要です。発達段階によっては、この抽象化がまだ十分に身についていない場合があります。
3. 語彙力と経験値の不足
比喩表現を理解するには、比喩で使われている事物についての知識が必要です。例えば「心が氷のように冷たい」という表現を理解するには、氷の性質を知っている必要があります。
比喩表現の種類と見分け方
比喩表現を見抜くためには、まず代表的な種類を知ることが重要です。
直喩(明喩)
「〜のような」「〜みたい」「〜ように」などの語句を使って直接的に比較する表現。
例:
- 雲のように白い肌
- 雷のような声
- 花のように美しい笑顔
見分けるポイント: 比較を表す語句が明確に使われている
隠喩(暗喩)
比較の語句を使わず、直接別のものに置き換える表現。
例:
- 時は金なり
- 人生は旅である
- 彼女は太陽だ
見分けるポイント: 「AはBだ」の形で、実際には異なるものを同一視している
擬人法
人間以外のものに人間的な性質や行動を与える表現。
例:
- 風が歌っている
- 太陽が微笑んでいる
- 時計が時を刻む足音
見分けるポイント: 無生物が人間のような行動をしている
擬態語・擬音語
音や様子を言葉で表現したもの。
例:
- さらさらと流れる川
- ぽかぽかと暖かい日差し
- どきどきする気持ち
見分けるポイント: 繰り返しの音で状態や音を表している
比喩表現に慣れるための日常的な練習法
1. 比喩表現チェックの習慣化
読書中のチェック方法
読書ノートの作成例:
———————————
本のタイトル:『○○○』
日付:○月○日
見つけた比喩表現:
①「彼の心は海のように深かった」(直喩)
②「母の愛は太陽だ」(隠喩)
③「風が頬を撫でていく」(擬人法)
——————————–
日常会話でのチェック
- テレビのニュースやバラエティ番組
- 家族との会話
- 友達との会話
- 広告やポスターの文章
チェックのコツ
- 「あれ?なんか変だな」と感じたら立ち止まる
- 字面通りの意味で理解できるかを考える
- できなければ比喩表現の可能性を考える
2. 換言練習の具体的方法
比喩表現を見つけたら、必ず「言い換え」の練習をしましょう。これが理解を深める最も効果的な方法です。
換言練習の手順
ステップ1:比喩表現の特定 「この表現は何と何を比べているのか?」を明確にする
ステップ2:共通点の発見 「なぜこの比較が成り立つのか?」を考える
ステップ3:直接的な表現への変換 比喩を使わずに同じ意味を表現する
練習例
元の表現:「彼の心は氷のように冷たい」
↓ ステップ1:「彼の心」と「氷」を比べている
↓ ステップ2:氷は冷たい → 感情がない、冷淡
↓ ステップ3:「彼は感情を表に出さず、冷淡な人だ」
3. レベル別練習プログラム
初級レベル:比喩表現に慣れる
- 短い文章での比喩表現探し
- イラスト付きの比喩表現集を活用
- 簡単な直喩から始める
中級レベル:意味を正確に理解する
- 隠喩や擬人法も含めた練習
- 文脈から意味を推測する練習
- 複数の比喩表現が含まれる文章の読解
上級レベル:表現効果を理解する
- なぜその比喩が使われたのかを考える
- 比喩表現の美しさや巧みさを味わう
- 自分で比喩表現を作る練習
家庭でできる具体的サポート方法
1. 比喩表現ゲーム
「何に似てる?ゲーム」 日常の物事を他のものに例える遊び
- 今日の天気は何に似てる?
- お母さんの料理の味は何に似てる?
- この音楽を色で表すと?
「言い換えゲーム」 比喩表現を直接的な表現に変換する遊び
- 「時間が飛ぶように過ぎる」→「時間が早く感じる」
- 「頭に雲がかかる」→「考えがまとまらない」
2. 読み聞かせでの工夫
比喩表現の強調読み 比喩表現の部分でゆっくり読んだり、声の調子を変えたりして注意を向ける
その場での解説 比喩表現が出てきたらすぐに「これはどういう意味かな?」と問いかける
視覚的な補助 可能であれば、比喩の元になっているものの写真や絵を見せる
3. 段階的な指導方法
第1段階:気づかせる
- 「ここに面白い表現があるよ」と注意を向ける
- 比喩表現の部分にマーカーを引く
- 「普通じゃない言い方だね」と意識させる
第2段階:理解させる
- 「これは何と何を比べているのかな?」
- 「なぜこの比較が使われているのかな?」
- 一緒に考えながら意味を解明する
第3段階:活用させる
- 同じような場面で他の比喩表現を考えさせる
- 日常の出来事を比喩で表現させる
- 作文や感想文で比喩表現を使うよう促す
よくある躓きポイントと対処法
躓きポイント1:字面通りに受け取ってしまう
例: 「雨が踊っている」→「雨が本当に踊っている」と思ってしまう
対処法:
- 「本当に雨が踊ることはできるかな?」と現実性を確認
- 「雨がどんな風に降っているか想像してみよう」と誘導
- 雨の動きと踊りの共通点を見つける
躓きポイント2:比喩の根拠が分からない
例: 「彼女は薔薇のようだ」の意味が分からない
対処法:
- 薔薇の特徴を具体的に挙げる(美しい、上品、トゲがあるなど)
- どの特徴が「彼女」に当てはまるかを考える
- 文脈から判断する
躓きポイント3:抽象的な概念の比喩が難しい
例: 「時間は川の流れのようだ」
対処法:
- まず具体的な体験から始める
- 「時間が経つ」感覚を思い出させる
- 川の流れを実際に見せたり、動画で見せたりする
比喩表現理解度チェックリスト
お子様の成長度合いを確認するためのチェックリストです。
基礎レベル
- 「〜のような」「〜みたい」の表現に気づける
- 簡単な直喩の意味が分かる
- 擬音語・擬態語を区別できる
発展レベル
- 隠喩(暗喩)に気づける
- 擬人法を理解できる
- 比喩表現を直接的な表現に言い換えられる
応用レベル
- なぜその比喩が使われたかを考えられる
- 文脈に応じて適切な解釈ができる
- 自分で比喩表現を作ることができる
継続的な学習のために
比喩表現日記の作成
毎日一つずつでも、出会った比喩表現を記録する習慣をつけましょう。
記録項目:
- 日付
- 見つけた場所(本、テレビ、会話など)
- 比喩表現そのもの
- 意味(自分の言葉で)
- 感想(面白いと思った理由など)
定期的な振り返り
週に一度は、これまで学んだ比喩表現を振り返り、意味を覚えているか確認しましょう。
読書習慣の確立
比喩表現に豊富に触れるためには、やはり読書が最も効果的です。年齢に応じた良質な文学作品を読む習慣を身につけることが大切です。
まとめ:比喩表現は「慣れ」が一番大切
比喩表現の理解は、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、日常的に意識して練習を重ねることで、必ず向上します。
成功のポイント:
- 気づく習慣をつける:比喩表現と出会ったら必ずチェック
- 換言練習を重ねる:言い換えることで理解を深める
- 段階的に進める:お子様のレベルに合わせて無理なく
- 継続する:短時間でも毎日続ける
- 楽しむ:ゲーム感覚で取り組む
比喩表現が理解できるようになると、文章の読解力が飛躍的に向上し、表現力も豊かになります。「気づけない」状態から「気づいて理解できる」状態へ、そして「自分でも使える」状態へと、お子様を導いていきましょう。
継続は力なり。この言葉自体も立派な比喩表現ですね。日々の積み重ねによって、お子様の国語力は確実に成長していくはずです。
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