国語の偏差値を決定づける「概念の具体化力」
抽象語の霧を晴らし、読解の解像度を上げる方法
「言葉は知っているけれど、意味がわからない」という、中学受験生の最大の壁を突破する。
中学受験の国語、特に高学年の論説文が難しく感じる最大の原因は、文章の中に「目に見えない言葉(抽象語)」が溢れかえるからです。
大人にとっては「自由」や「伝統」といった言葉は、これまでの人生経験という膨大なデータと紐付いています。しかし、経験の浅い子供たちにとって、これらは単なる「漢字の並び」に過ぎません。脳内に映像が浮かばないまま読み進めることは、霧の中を地図なしで歩くようなものです。
今回は、抽象的な言葉に「生きたイメージ」を吹き込み、読解力を根本から変えるための「具体化トレーニング」を徹底解説します。
【目次】本質的な語彙力を育てるステップ
- なぜ「暗記」だけでは入試の記述で通用しないのか
- 入試頻出ワードを「子供の日常」に翻訳する具体例
- 「抽象と具体の往復」を習慣にする親子の対話法
- 読解のスピードを上げる「概念の棚卸し」
- まとめ:言葉が「見える」ようになれば、世界が変わる
1. 「辞書の意味」と「使える意味」の決定的な違い
例えば、お子さんに「自由とは何か?」と聞いてみてください。多くの子が「好きなことをすること」と答えるでしょう。しかし、入試の論説文で問われる「自由」は、「責任を伴う選択」や「他者との境界線」といった、より重い意味を含んでいます。
辞書を引いて「束縛がないこと」という定義を覚えても、記述問題で「ここでの自由の制限とはどういうことか」と問われたときに、具体像が浮かばなければペンは止まってしまいます。語彙力とは、単語の数ではなく、「その言葉からどれだけ多くの具体的な場面を連想できるか」の勝負なのです。
2. 入試頻出!難解ワードの「翻訳」リスト
子供が躓きやすい抽象概念を、身近なたとえ話で「翻訳」してみましょう。この「翻訳」のプロセスを親子で繰り返すことが、最強の国語対策になります。
| 抽象概念(入試ワード) | 子供の脳に届く「たとえ・翻訳」 |
|---|---|
| 権利 |
「誰にも邪魔されずに『これ、僕のだよ!』と言えるチケット」 (例:休み時間に校庭で遊ぶ権利、自分の持ち物を大切にする権利) |
| 伝統と革新 |
「リレーのバトン(伝統)と、次の走者の走り方の工夫(革新)」 (例:100年前から続く秘伝のタレを使いつつ、新しい具材に挑戦するラーメン屋) |
| 循環 |
「終わりが始まりに繋がる、ぐるぐる回るバトンタッチ」 (例:雨が降り、川に流れ、海から蒸発してまた雨になる水の旅) |
| 普遍(ふへん) |
「いつでも、どこでも、誰にでも当てはまる『究極のルール』」 (例:『お腹が空いたら何か食べたい』という気持ちは、昔の人も外国の人も同じ) |
3. 家庭での処方箋:抽象と具体を「往復」させる
語彙力を「定着」させるには、インプットだけでなくアウトプットが必要です。それも、一方通行ではなく「抽象から具体」「具体から抽象」の双方向で鍛えるのが最も効果的です。
【ステップ①】具体化の問いかけ
テキストに難しい言葉が出てきたら、間髪入れずにこう聞いてください。
「例えば、学校の生活で言うとどういうことかな?」
この「学校で言うと」という縛りが強力です。子供が自分のテリトリーに引き寄せて考え始めた瞬間、言葉に血が通い始めます。
【ステップ②】抽象化(まとめ上げ)の訓練
逆に、バラバラの出来事を一言でまとめる訓練も有効です。
「野菜の皮を堆肥にして、その土でまた野菜を育てる。これ、漢字二文字で言うと何だっけ?」→「循環!」
この「あだ名をつける」ような感覚が、記述問題での要約力に直結します。
4. 読解スピードは「概念のストック」で決まる
入試の本番、初見の難しい文章をスラスラ読める子は、文章を読みながらリアルタイムで「具体例」を脳内に再生しています。逆に読めない子は、言葉を「音」として滑らせているだけです。
保護者が家庭で具体例を共有し続けることは、子供の脳内に「概念の引き出し」を増やす作業に他なりません。この引き出しが多いほど、どんなに難しいテーマが来ても「あ、これってあの時話した『循環』の話だ」と、瞬時に内容を予測できるようになります。