ブログ

【中学受験国語】「主人公の気持ちがわからない」は、子どものせいじゃない。物語文でつまずく本当の理由と、親にできること

国語

2026.03.30

【中学受験国語】「主人公の気持ちがわからない」は、子どものせいじゃない。物語文でつまずく本当の理由と、親にできること


📖 「主人公はどんな気持ちだったと思う?」
こう聞かれて、お子さんがしばらく黙ってしまった経験はありませんか?
あるいは「悲しかった」「うれしかった」と一言だけ答えて、それ以上掘り下げられなかった、ということは?

実は、小学生が物語文の心情問題でつまずくのには、ちゃんとした理由とパターンがあります。それを知るだけで、親御さんのサポートの仕方がぐっと変わってきます。

なぜ子どもは登場人物の気持ちが読めないのか

小学校の国語において、物語文の読解は非常に大きな比重を占めます。とりわけ「登場人物の気持ちを読み取る」設問は、学校のテストでも入試問題でも頻繁に登場します。にもかかわらず、多くの子どもがこの問いに正確に答えることを苦手としています。

なぜでしょうか。答えはシンプルです。「経験したことのない感情は、想像しにくい」のです。

大人であれば、長年の経験を通じて「こういう場面ではこう感じるはずだ」という引き出しを豊富に持っています。悲しい経験、うれしい経験、後悔した経験、誰かに裏切られた経験……。それらが積み重なって、初めて「あの場面の登場人物はこんな気持ちだったのだ」と腑に落ちる感覚が生まれます。

しかし子どもは生まれてまだ数年〜十数年しか経っていません。出会った感情の数も、種類も、大人に比べるとまだとても少ない。それは欠点でも遅れでもなく、ただ単純に、人生経験の蓄積がまだ薄いというだけのことです。

ところが学校のテストや授業では、そうした経験の差を考慮せずに「登場人物の気持ちを答えなさい」という問いが出てきます。子どもにとってはまるで、見たこともない景色の絵を描けと言われているようなものです。そう考えると、つまずくのは当然のことだと思えてきませんか。

だからこそ、大人のサポートが本質的な意味を持ちます。子どもの「わからない」を叱ったり焦ったりするのではなく、経験の橋渡しをしてあげることが、読解力の土台をつくる最初の一歩になるのです。

小学生が特につまずきやすい「4つの心情」

物語文の中でも、子どもが特に読み取りにくい感情があります。ここでは代表的な4つを取り上げ、それぞれのつまずきポイントを詳しく掘り下げていきます。

👨‍👧
親が子を思う気持ち

子どもにとって「親になる」という経験はまだ先の話。「我が子のためなら何でもできる」という深い愛情は、頭では理解できても、腹の底から実感するのは難しいものです。

😢
感動して涙が出る気持ち

「うれしくて泣く」「感激して泣く」という感情は、子どもには違和感を覚えることも。「泣く=悲しい」というシンプルな図式に慣れているため、複雑な涙の意味を読み解くのが難しいのです。

💔
信頼していた人に裏切られた気持ち

大切な人への失望感・裏切られた傷つきは、深い信頼関係を経験してこそわかる感情です。まだ浅い人間関係しか知らない子どもには、その痛みの深さを想像するのが困難です。

🍂
別れの寂しさや喪失感

大切なものを永遠に失う体験は、子どもにとってまだ少ないもの。「また会えばいい」とすっきり割り切れてしまう子には、永続する喪失感の重さが伝わりにくいことがあります。

① 「親が子を思う気持ち」——無条件の愛はまだ遠い

物語文にはよく、親が子どものために自分を犠牲にしたり、子どもの成長を見守って涙を流したりするシーンが登場します。こうした場面を読んだとき、子どもは「なぜそこまでするの?」という疑問を持つことがあります。

それは決して冷たいわけでも、親への感謝がないわけでもありません。ただ、「我が子を持つ」という経験がまだないために、その感情の重みがリアルに迫ってこないのです。親の愛情というのは、自分が親になったとき、あるいは子育ての大変さや喜びを間近で見たときに初めて、その深さが本当にわかるものです。

こういう場面では、「お父さんね、○○ちゃんが生まれたとき、本当にうれしくて泣いたんだよ」というような、実際の親御さん自身のエピソードを話してあげるのが非常に効果的です。抽象的な「親の愛情」を、具体的な我が家の話として語ることで、子どもの心にぐっと近づきます。

② 「感動して涙が出る気持ち」——泣く理由はひとつじゃない

「悲しいから泣く」——これは子どもが最初に覚える「泣く」の意味です。転んで痛いから泣く、おもちゃを取られて悔しいから泣く。泣くことは、ネガティブな感情と直結していると認識している子どもが多いです。

しかし物語文には、うれしくて泣く場面、感動して泣く場面、懐かしくて泣く場面など、さまざまな「涙の意味」が登場します。こうした複雑な涙は、子どもにとってはなかなか腑に落ちません。「なんで泣いてるの?うれしいんじゃないの?」と感じる子も多いのです。

この感情を伝えるには、「泣く=悲しい」という図式を崩してあげることが大切です。「感動して泣くことって、大人になるとあるんだよ。運動会でお子さんが頑張ってる姿を見て、お父さんやお母さんが泣くのも、悲しいんじゃなくて、すごくうれしいし、誇らしいからなんだよ」というように、身近なシーンに落とし込んで話してみましょう。

③ 「信頼していた人に裏切られた気持ち」——傷の深さは信頼の深さに比例する

これは大人でも複雑な感情です。ただ嫌なことをされた「怒り」とは違い、「信頼」があったからこそ生まれる特別な傷つきです。「あんなに信じていたのに」という気持ちと「どうして?」という混乱、そして「もうこの人を信じられない」という悲しみが入り混じった、非常に複合的な感情です。

子どもの人間関係は、まだ深い信頼を築くには至っていないことがほとんどです。友達と喧嘩することはあっても、「長年の信頼を裏切られた」という経験は少ない。だからこそ、この感情の重さや複雑さが読み取れないのです。

「ずっと仲のよかった友達に秘密を言いふらされたら、どんな気持ちになると思う?」というように、子どもが少し想像できるシチュエーションに置き換えて話すと、グッと理解が深まります。「怒りだけじゃなくて、悲しくてがっかりして、もう信じられないって気持ちにもなるよね」と言葉にしてあげましょう。

④ 「別れの寂しさ・喪失感」——「またいつか」が通じない別れ

引越しや転校、ペットの死、大切な人との永遠の別れ——物語文にはこうした喪失の場面が多く登場します。子どもも友達と別れた経験はあるかもしれませんが、「また連絡すればいい」「またどこかで会える」という感覚が根底にあることが多く、取り返しのつかない喪失の痛みとはまた違います。

また、死別や永遠の別れという経験が少ない子どもにとっては、それがどれほどの重さを持つかを実感するのが難しいこともあります。読んでいても「また会えばいいじゃん」と感じてしまい、登場人物の深い悲しみが伝わってこないのです。

「もう二度と会えないってわかったとき、どんな気持ちになると思う?」と問いかけてみてください。「ただ寂しいっていうより、その人がいた時間がすごく大切だったんだって気づいて、それが戻ってこないのがたまらなく悲しい気持ちだよ」と添えてあげると、喪失感の輪郭が少し見えてきます。

「代弁」が読解力を育てる理由

こうした感情に子どもがつまずいたとき、大人はどう関わればよいのでしょうか。答えは意外とシンプルです。「代弁してあげる」こと——これに尽きます。

「主人公は長年育ててきた子どもを送り出す場面だから、誇らしいけど寂しい、って複雑な気持ちだったと思うよ」というように、物語の状況と感情を結びつける言葉かけが、子どもの想像力を大きく助けます。

感情に名前をつけてもらうことで、子どもははじめて「そういう気持ちがあるんだ」と知ることができます。読解力とは、語彙の積み重ねであり、感情の経験値の積み重ねでもあるのです。

これは決して「答えを教える」行為ではありません。子どもが自分ではまだ気づけない感情の世界に、大人が橋をかけてあげているのです。この橋渡しを繰り返すことで、子どもは少しずつ感情語彙を自分のものとして身につけ、やがて大人の助けなしでも心情を読み取れるようになっていきます。

大切なのは、代弁した後に「あなたはどう思う?」と子ども自身の感想を引き出すことです。「主人公はこう感じたんだよ」と話したうえで、「あなたならどう感じる?」「似たような気持ちになったことある?」と問いかける。こうした往復のやりとりが、読解力を育てる上で非常に効果的です。

⚠️ ひとつ注意点:代弁は「正解を押しつける」行為になってはいけません。「この場面はこういう気持ちに決まってるでしょ!」と強く言いすぎると、子どもは自分で考えることをやめてしまいます。あくまで「こういう気持ちだと思うよ、どう思う?」という対話のスタイルを心がけましょう。

「感情語彙」の豊かさが読解力を決める

読解力を語るとき、「語彙力」の話は必ずといっていいほど出てきます。漢字を知っているか、言葉の意味を知っているか——これはもちろん重要です。しかしそれと同じくらい、いやある意味それ以上に重要なのが、「感情語彙」の豊かさです。

感情語彙とは、感情を表す言葉の引き出しのことです。「悲しい」「うれしい」「怒っている」という基本的な感情語だけでなく、「切ない」「もどかしい」「胸が締め付けられる」「誇らしい」「やるせない」「后悔する」「安堵する」……といった、より細やかで複雑な感情を表す言葉を知っているかどうかが、読解の精度に直結します。

たとえばテストで「主人公の気持ちを書きなさい」という問いに対し、感情語彙の少ない子は「悲しかった」と書くことしかできません。でも感情語彙が豊かな子は「嬉しいのに涙が出るような、切なくて誇らしい気持ち」というように、より正確に、より豊かに表現できます。採点上もそうですし、それ以上に、物語の深みをきちんと受け取れているかどうかが違ってくるのです。

感情語彙は、日常会話の中で少しずつ育てることができます。子どもが「なんか嫌な感じ」と言ったときに、「それって、悔しいっていう気持ちかな?それとも、恥ずかしいのかな?」と、より細かい言葉を提示してあげる。これだけでも感情語彙の引き出しが少しずつ広がっていきます。

日常会話でできる「心情トレーニング」

読解力を育てるのは、国語の勉強の時間だけではありません。むしろ、日常のちょっとした会話の中にこそ、心情を言葉にする絶好の機会が潜んでいます。特別な教材や時間がなくても、今日からすぐにできることがたくさんあります。

🌱 今日からできる!大人の声かけ例

  • テレビのドラマや映画を一緒に見ながら「この人、どんな気持ちだと思う?」と問いかける。答えを求めるのではなく、「そうかもね」「他にはどうかな?」と広げていくのがポイント。
  • 絵本や漫画の登場人物の表情に注目して「この顔、何か感じてるかな。どんな気持ちだと思う?」と一緒に観察する。
  • 子どもが経験したできごとを振り返り「あのとき、どんな気持ちだった?」と言語化を促す。「楽しかった」で終わらず「どんなふうに楽しかった?」と掘り下げてみて。
  • 大人自身の気持ちを率直に語る。「お母さん、さっきこういうことがあって、こんな気持ちになったよ」と話すことで、子どもは感情の表現を自然に学ぶ。
  • 物語を読んだ後に「もし自分がその立場だったら、どうしたと思う?」という問いを一緒に考える。正解はない問いだからこそ、自由に想像できる。
  • ニュースや身近な出来事について「あの人はどんな気持ちだったんだろうね」と、実際の出来事に絡めて感情を想像する習慣をつける。

どれも共通して大切なのは、正解を求めないことです。「違う、それじゃない」と否定するのではなく、「そうか、○○って感じたんだね」とまず子どもの言葉を受け止める。そのうえで「それもあるかもね。他にはどうだろう?」と広げていく。このやりとりの積み重ねが、感情理解の深い土台をつくっていきます。

また、親御さん自身が感情豊かに言葉を使うことも、とても大切なモデルになります。「今日、○○があってさ、なんとなく気持ちが落ち着かないんだよね——あれって『もやもやする』って言うんだよ」というような日常会話が、子どもの感情語彙をじわじわと育てていきます。

💡 コラム:「感情を言語化する力」は大人になっても役立つ

感情をうまく言葉にする力——これは読解力のためだけに必要なスキルではありません。社会に出てから、職場での人間関係、パートナーとのコミュニケーション、自分自身のメンタルヘルスの管理など、あらゆる場面で「自分の気持ちを言葉にする力」は問われます。

小学生のうちに育てておくこの力は、国語のテストの点数を上げる以上の価値を持っています。子どもが自分の感情を言葉で表現できるようになることは、豊かな人生を送るための土台のひとつなのです。

「感情の経験値」を積み上げることが最大の近道

読解力の向上に魔法のような近道はありませんが、確実に効果があることが一つあります。それは、たくさんの良質な物語に触れることです。

良質な物語には、子どもがまだ経験していないさまざまな感情が詰まっています。悲しみ、喜び、後悔、憧れ、嫉妬、感謝、諦め、希望……。こうした感情を物語という「安全な空間」の中で疑似体験することで、子どもは少しずつ感情の経験値を積み上げていきます。

この「物語の中での疑似体験」は、実際の経験とほぼ同じくらいの力を持つと言われています。実際に誰かを失わなくても、物語の中で深い喪失を体験した子どもは、その感情の輪郭を少し知っています。実際に親になっていなくても、親の視点で書かれた物語をじっくり読んだ子は、その愛情の深さを少し想像できるようになります。

読み聞かせは、そういう意味でも非常に有効な方法です。ただ読むのではなく、途中で「この場面、どんな気持ちだと思う?」と問いかけながら読む、あるいは「お父さんはここが好きでさ、こんな気持ちになるんだよ」と自分の感想を話す——こうした親子の対話が、物語の疑似体験をより深くします。

年齢が上がって子どもが一人で本を読めるようになっても、「どんなお話だった?」「どの場面が印象に残った?」と聞く習慣を続けましょう。感想を言語化することで、感情の体験が記憶に定着し、次の読解に活きてきます。

テスト直前にできる「心情問題」の対策

最後に、もう少し実践的な話をしましょう。テストや受験で心情問題が出たとき、どうアプローチすればよいかについてです。

まず基本として覚えておきたいのが、「気持ちは理由とセットで書く」というルールです。「悲しかった」だけでは不十分で、「○○だったから、悲しかった」というように、理由を必ず添える習慣をつけましょう。この「理由+感情」の形が、心情問題の答え方の基本です。

次に、「その前後の文脈をしっかり読む」ことが重要です。感情は突然生まれるものではなく、必ず前後の出来事や状況と繋がっています。「なぜこの場面でこの登場人物はこう感じたのか?」という問いを立てて、少し前の段落を読み返す習慣をつけてみてください。

そして、「登場人物の立場に立って想像する」ことです。自分だったらどう感じるか?ではなく、その登場人物の年齢・状況・これまでの経験を踏まえて、その人物ならどう感じるかを想像する。これが心情読解の核心です。

📝 心情問題の答え方・3ステップ

  • ステップ1:前後の文脈を確認する——「なぜこの場面でこう感じたのか?」を考えるために、少し前の段落を読み返す。
  • ステップ2:登場人物の立場に立つ——「自分だったら」ではなく「この人物だったら」の視点で想像する。
  • ステップ3:理由+感情の形で書く——「○○だったから、△△という気持ち」という構造で答えをまとめる。

このステップを日頃から練習しておくことで、テスト本番でも落ち着いて心情問題に向き合えるようになります。練習は、教科書の物語文でも、読み聞かせの絵本でも、なんでも構いません。大切なのは、日常的に「この人はどんな気持ちだろう?」と問いを立てる習慣そのものです。

📝 この記事のまとめ

  • 子どもが物語の心情を読み取れないのは、まだ経験したことのない感情だから——これは欠点ではなく、経験値の差
  • 特につまずきやすいのは「親の愛情」「感動の涙」「裏切りの傷」「喪失感」の4つ
  • 大人が「代弁」することで、子どもの感情語彙は少しずつ豊かになっていく
  • 代弁の後は「あなたはどう思う?」と子ども自身の言葉を引き出すことが大切
  • 感情語彙(感情を表す言葉の引き出し)が豊かなほど、読解の精度は上がる
  • 日常会話の中で心情を言葉にするやりとりを増やすことが、最も自然な読解力トレーニング
  • 良質な物語をたくさん読み、疑似体験の引き出しを積み上げることが最大の近道
  • テストでは「理由+感情」の形で答え、登場人物の立場で想像する習慣を

読解力は一朝一夕では育ちませんが、日々の小さな積み重ねは確実に力になります。テストの点数だけを目標にするのではなく、子どもが感情豊かに言葉の世界を広げていけるよう、焦らずゆっくりサポートしてあげてください。

小島一浩

小島 一浩Kojima Kazuhiro

早稲田大学法学部を卒業後、塾講師としての道を歩みはじめ、市進学院やサピックスにて中学受験指導に携わってきました。講師歴は20年以上にわたり、御三家をはじめとする最難関校から中堅校まで、幅広いレベルの受験生を指導しております。

ブログ一覧に戻る