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中学受験国語:辞書に頼らない!漢字と文脈から語彙力を伸ばす方法

国語

2025.08.05

中学受験国語:辞書に頼らない!漢字と文脈から語彙力を伸ばす方法

辞書を引くことも大切ですが・・・

中学受験の国語では、小学生にとって難しい語彙が数多く登場します。分からない言葉に出会ったとき、多くの保護者の方は「辞書を引きなさい」とおっしゃるでしょう。

確かに辞書を引くことは大切です。しかし、それと同じくらい重要なのが、漢字や文脈から意味を類推する力を身につけることなのです。

なぜなら、テスト本番では辞書を引くことができないからです。

なぜ「類推力」が重要なのか

テスト本番での現実

中学受験のテストでは、当然ながら辞書の使用は認められていません。

本番で起こりがちなこと:

  • 知らない言葉が出てきてパニックになる
  • 意味が分からず問題が解けない
  • 時間だけが過ぎてしまう
  • 自信を失って他の問題にも影響する

類推力があることのメリット

一方、漢字や文脈から意味を類推できる子は

  • 未知の語彙に遭遇しても動じない
  • 大体の意味を把握して問題を解ける
  • 読解のスピードが落ちない
  • 自信を持ってテストに臨める

大人と小学生の感覚の違い

大人にとっては「当たり前」でも…

大人であれば、これまでの経験や知識から「何となく意味を想像できる」言葉でも、小学生にとっては全く見当がつかない場合が多くあります。

例:「心境」という言葉

  • 大人:「心」と「境」から、心の状態のことだと推測できる
  • 小学生:「境」という漢字の意味が曖昧で、全く想像がつかない

経験値の違い

小学生は、

  • 漢字の知識がまだ限定的
  • 語彙の蓄積が少ない
  • 文脈から推測する経験が不足している
  • 抽象的な概念の理解が発展途上

これらの理由から、意識的に類推力を鍛える必要があるのです。

漢字から意味を類推する方法

1. 漢字一文字ずつの意味を考える

複合語の場合、それぞれの漢字の意味を組み合わせて考えます。

例:「心配」

  • 「心」= 気持ち、心
  • 「配」= 配る、行き渡らせる
  • → 心を色々なところに向ける = 気にかける

例:「感動」

  • 「感」= 感じる
  • 「動」= 動く
  • → 心が感じて動く = 深く心を動かされる

2. 部首から推測する

漢字の部首は、その文字の意味のカテゴリーを示してくれます。

よく出る部首とその意味:

  • 心(りっしんべん):感情に関する言葉
  • 水(さんずい):水に関連する言葉
  • 手(てへん):手の動作に関する言葉
  • 言(ごんべん):言葉や話すことに関する言葉

3. 音読みの共通性を利用する

同じ音読みを持つ漢字は、似たような意味を持つことがあります。

例:「コウ」と読む漢字群

  • 考、巧、効、校、交 など
  • これらに共通するのは「何かを組み合わせる」「工夫する」という意味合い

文脈から意味を類推する方法

1. 前後の文から手がかりを探す

分からない言葉の前後にある文章が、その語彙の意味を説明している場合があります。

例文: 「彼は非常に慎重で、何事も十分に考えてから行動する人だった。」

  • 「十分に考えてから行動する」→ 「慎重」は「注意深い」という意味だと推測できる

2. 対比表現を利用する

「しかし」「一方」「それに対して」などの接続語の前後で、対比される言葉から意味を推測できます。

例文: 「兄は大胆だが、弟は臆病だった。」

  • 「臆病」の反対 → 「大胆」は「勇気がある」という意味だと推測できる

3. 具体例から抽象化する

文章中に具体例が示されている場合、その例から抽象的な意味を推測できます。

例文: 「彼女の趣味は読書と映画鑑賞だった。」

  • 「読書と映画鑑賞」は楽しみでやること → 「趣味」は「好きでやること」だと推測できる

家庭での実践方法

日常会話での声かけ

普段の会話の中で、意味を類推する習慣をつけましょう。

効果的な問いかけ:

  • 「この言葉はどんな意味だと思う?」
  • 「この漢字を見て、何を想像する?」
  • 「前の文を読むと、どんな意味か分かるかな?」

読書中のアプローチ

本を読んでいるときに分からない言葉が出てきたら:

  1. まず推測させる 「どんな意味だと思う?」
  2. 推測の根拠を聞く 「なぜそう思ったの?」
  3. 辞書で確認 推測した後で、正解を確認する
  4. 推測と正解を比較 「惜しかったね」「ピッタリだったね」

ゲーム感覚での練習

「意味当てゲーム」

  1. 保護者が新しい言葉を文章中で使う
  2. 子どもが意味を推測する
  3. 正解を発表
  4. 推測が当たったら得点

このような遊びを通じて、推測することに慣れさせましょう。

学習段階別のアプローチ

初級段階(4年生頃)

  • 身近な言葉の組み合わせから始める
  • 漢字一文字ずつの意味を確認する習慣
  • 絵や写真と合わせて理解する

例:「玄関」

  • 玄(黒い、深い)+関(門)
  • → 奥深い入り口 = 家の入り口

中級段階(5年生頃)

  • 抽象的な言葉にも挑戦
  • 文脈からの推測を積極的に行う
  • 複数の手がかりを組み合わせて考える

例:「感慨」

  • 感(感じる)+慨(心の動き)
  • 文脈:「昔のことを思い出して感慨にふける」
  • → 深く心に感じること

上級段階(6年生頃)

  • 難易度の高い語彙にチャレンジ
  • 推測の精度を上げる
  • 推測できなかった語彙の分析

よくある間違いとその対策

間違い1:漢字の一部だけで判断

例:「感動」を「感じて動く」と解釈

  • 正しくは「心が深く動かされる」
  • 対策:複数の要素を総合的に判断する

間違い2:文脈を無視した推測

前後の文章を読まずに、漢字だけで判断してしまう

  • 対策:必ず文脈も含めて考える

間違い3:推測を確認しない

推測したまま放置してしまう

  • 対策:後で辞書で確認する習慣をつける(これ大事です。)

テスト本番での活用法

時間配分

推測に時間をかけすぎないよう、1つの語彙につき30秒程度で判断する

推測の優先順位

  1. 問題を解く上で重要な語彙を優先
  2. 文章全体の理解に関わる語彙
  3. 細かい修飾語などは後回し

推測できない場合

完全に推測できない場合も、部分的な理解で問題解決を試みる

まとめ

漢字や文脈から語彙の意味を類推する力は、中学受験の国語において極めて重要なスキルです。

身につけるべき習慣:

  1. 分からない言葉に出会ったら、まず推測してみる
  2. 漢字の構成要素に注目する
  3. 前後の文脈を丁寧に読む
  4. 推測した内容を後で確認する

この力は一朝一夕には身につきません。日常的な練習を通じて、少しずつ「類推のセンス」を磨いていくことが大切です。

「この言葉はどんな意味だと思う?」

この一言から始まる語彙力向上の取り組みを、ぜひ今日から実践してみてください。お子さんの推測力が向上すれば、国語の読解力は格段にアップするはずです。

何かありましたら、いつでもお問合せくださいませ。

小島一浩

小島 一浩Kojima Kazuhiro

早稲田大学法学部を卒業後、塾講師としての道を歩みはじめ、市進学院やサピックスにて中学受験指導に携わってきました。講師歴は20年以上にわたり、御三家をはじめとする最難関校から中堅校まで、幅広いレベルの受験生を指導しております。

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