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中学受験国語:夏の読解練習を効果的にする「課題意識」の持ち方

国語

2025.08.06

中学受験国語:夏の読解練習を効果的にする「課題意識」の持ち方

様々な文章に触れる機会だからこそ・・・


夏期講習や夏休みの間、お子さんは様々なジャンルの文章を読むことになるでしょう。論説文、物語文、随筆文など、多岐にわたる文章との出会いが待っています。

しかし、ただ何となく文章を読んでいるだけでは、読解力の向上は期待できません。

この夏の読解練習を最大限活用するために必要なのは、明確な「課題意識」を持つことです。

「なんとなく読むこと」の問題点

漫然とした読解の限界
課題意識のない読解練習では、以下のような問題が生じます:

よくある無目的な読解パターン:

・文字を追うだけで内容が頭に残らない
・同じような間違いを繰り返す
・時間をかけた割に力がつかない
・読解のポイントが身につかない

受け身の姿勢がもたらすもの

「とりあえず問題を解く」という受け身の姿勢では・・・

・文章の構造を理解する力が育たない
・出題者の意図を読み取れない
・応用問題に対応できない
・本番での実力発揮ができない

文章ジャンル別・課題設定の具体例

論説文・説明文の読解課題

課題1:具体例とまとめをしっかり区別する

なぜ重要か: 論説文では、筆者は抽象的な主張を具体例で説明し、最後にまとめで結論を述べます。この構造を理解できれば、文章の骨組みが見えてきます。

具体的な取り組み方:
・主張と具体例の関係を矢印で結ぶ
・「つまり」「このように」などの接続語に注目

練習例:
【主張】読書は心を豊かにする。 【具体例】例えば、小説を読むことで、様々な登場人物の気持ちを理解できる。 【まとめ】このように、読書を通じて人間性を育むことができるのである。

課題2:対比項目を見つけ、筆者の主張を理解する

なぜ重要か: 多くの論説文では「AではなくB」という対比構造で主張が展開されます。

具体的な取り組み方:
・「しかし」「一方」「それに対して」などの対比を示す接続語をマーク
・対比される内容を表にまとめる
・筆者がどちら側を支持しているかを確認

課題3:筆者の価値観を読み取る

具体的な取り組み方:

・「〜べきだ」「〜ことが大切だ」などの価値判断を含む表現をマーク
・筆者が肯定的に書いている事柄と否定的に書いている事柄を整理

物語文の読解課題

課題1:直接的な心情表現をチェックする

なぜ重要か: 物語文の問題では、登場人物の心情を正確に把握することが求められます。

具体的な取り組み方:
・「嬉しい」「悲しい」「驚いた」などの感情語に印をつける
・その心情になった理由を前後の文から探す
・心情の変化を時系列で整理する

課題2:間接的心情表現を見つけ、心情を言語化する

なぜ重要か: 物語文では、直接的に心情を表現せず、行動や様子で心情を表現することが多くあります。

具体的な取り組み方:
・登場人物の行動(「うつむく」「足早に歩く」など)に注目
・表情の描写(「眉をひそめる」「目を輝かせる」など)をチェック
・それらの行動や表情が表す心情を言語化する

例:
【間接的表現】「太郎は黙って下を向いた。」 【心情の言語化】→ 困惑している、恥ずかしがっている、落ち込んでいる

課題3:情景描写と心情の関係を理解する

具体的な取り組み方:
・天気、季節、時間帯の描写に注目
・その情景が登場人物の心情とどう関係しているかを考える
・明るい情景→明るい心情、暗い情景→暗い心情の対応を確認

随筆文の読解課題

課題1:筆者の体験と感想を区別する

具体的な取り組み方:
・事実(体験)の部分と筆者の感想・考えの部分を色分けする
・体験から筆者が何を学んだかを整理する

課題2:筆者の人柄や価値観を読み取る

具体的な取り組み方:

・筆者の行動や選択に注目
・その背景にある価値観を推測する
・文章全体から筆者の人物像を描く

比喩表現の読解課題

課題:比喩表現を一般化して解釈する

なぜ重要か: 比喩は抽象的な概念を具体的なもので表現する技法です。その本質を理解することが重要です。

具体的な取り組み方:
・比喩で表現されている内容を特定する
・何が何にたとえられているかを明確にする
・なぜそのたとえが使われているかを考える
・比喩を使わない表現に言い換える


例:
【比喩表現】「彼女の笑顔は太陽のようだった。」 【一般化】→ 明るく温かい笑顔だった 【解釈の根拠】太陽=明るさ、温かさの象徴


課題意識を持った読解練習の進め方
Step 1:今日の課題を決める
練習を始める前に、その日取り組む課題を明確にします。

例:
「今日は物語文の心情表現に注目して読もう」
「論説文の対比構造を意識して読もう」

Step 2:課題を意識しながら読解
決めた課題を常に意識しながら文章を読み、問題を解きます。

Step 3:課題達成度の確認
読解が終わったら、設定した課題がどれくらい達成できたかを振り返ります。

Step 4:次回への改善点を見つける
うまくできなかった部分を特定し、次回の課題設定に活かします。

保護者ができること

課題設定のサポート
「今日はどんなことを意識して読む?」と声をかけ、お子さんが課題を意識できるようサポートします。

振り返りの促進
「今日の課題はできた?」「どんなところが難しかった?」と振り返りを促します。

具体例の提示
お子さんが課題設定に困ったときは、具体例を示してあげましょう。

・避けるべき声かけ
「とりあえず読んでおきなさい」
「答えが合ってればいいでしょう」
「時間内に解けた?」(課題達成度への言及なし)

まとめ
この夏の読解練習を効果的に進めるためには、明確な課題意識を持つことが不可欠です。

今日から実践できること:

毎日の課題を明確に設定する 今日は何を意識して読むかを決める
課題を意識した読解を心がける 漫然と読むのではなく、目的を持って読む
振り返りを必ず行う 課題達成度を確認し、次回への改善点を見つける
段階的にレベルアップする 基本的な課題から徐々に高度な課題へ

課題意識のない読解練習は、時間の無駄になってしまいます。
しかし、明確な目標を持って取り組めば、この夏の努力は必ず秋以降の実力向上につながります。
お子さんと一緒に、今日の読解課題を決めることから始めてみてください。継続的な課題意識のある練習が、確実な読解力向上をもたらすはずです。
頑張りましょう!

何かありましたら、いつでもお問合せくださいませ。

小島一浩

小島 一浩Kojima Kazuhiro

早稲田大学法学部を卒業後、塾講師としての道を歩みはじめ、市進学院やサピックスにて中学受験指導に携わってきました。講師歴は20年以上にわたり、御三家をはじめとする最難関校から中堅校まで、幅広いレベルの受験生を指導しております。

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